ネットにレシピが溢れ、無料の動画を見放題の今、料理教室ができることといえば目の前の生徒さんひとりひとりに誠意をもって伝えることだと思っています。料理が好きな人も料理が苦手な人もいます。料理教室に期待することも人それぞれですし、仕事がオフの日に気分転換をしに来る人、実にいろいろです。

料理クラスでは3～4品を作ります。試食の時に食事として楽しめるように主菜と副菜、時には簡単に作れるデザートをつけています。作ったあとは味見をするような試食タイムではなくて食事を楽しむ時間にしたいと思い、このスタイルにしています。
そして、どうしてこの主菜とこの副菜を組み合わせたのかを説明しています。栄養や味のバランス、食感や風味などのバリエーションを加えると「美味しい！」が増えるので食事を楽しむためのちょっとしたアイディアの紹介もできます。

「美味しい！」は体で感じるものなのでレッスン中に言葉で説明するだけだと生徒さんの頭の中を通り抜けてしまいますけど実際に口にすると「美味しい！」を体感して脳にインプットされます。

特別な料理を作らなくても、珍しい食材を使わなくても、美味しい料理を作ることができます。そして、日頃はどうしても使う食材やメニューが偏ってしまいがちなのでちょこっと変化を入れると気持ちが少し上がります。

今年に入ってこれまで料理クラスで紹介したメニューでいくつか紹介しましょう。

1月は鶏肉と3種類のきのこを煮込みました。イノシン酸が豊富な鶏肉とグルタミン酸が豊富なきのこを合わせれば“美味しい”は保証付き。食材を切って煮込むだけの簡単料理。仕上げに生クリームでコクとなめらかさをプラスしました。
サイドディッシュとしてかぶとにんじんのスープを作り、粒マスタードで味つけをしました。粒マスタードというとソーセージに塗って食べるイメージが強いのですが、辛くはないので調味料としてオールマイティーに使えます。マスタードはアブラナ科からし菜の種子で種類によって異なる商品（カラシ、ディジョンマスタード、粒マスタード等）になりますが、製造過程で砂糖、ワイン、ビネガーなどの調味料を加えているためとても香りが豊でスープに入れると味に深みがでます。
炒めものに入れてもいいし、シチューなどの煮込みに少し入れると風味がプラスされます。粒マスタードが入っていることは分かりません。

2月は大根のサラダにはんぺんを入れました。はんぺんが生のままで食べられると知らなかった生徒さんは驚いていました。が、あの独特のもちふわ食感と大根のシャキシャキした歯ごたえの組み合わせを気に入ってくれたようです。

3月はチキン南蛮を作りました。全くもって珍しくない定番のお料理ですがタルタルソースに入れる卵は茹で卵ではなく炒り卵を使うとソースと卵がより一体になることや、衣にサラダ油を入れるとフライパンで鶏肉を焼いた時に余分な油を吸わずにサクッと仕上がる、を体験してもらいました。

今月の4月はじゃがいもとれんこんを細かくカットし、お米に見立ててリゾットを炊いています。お米でリゾットを炊くのは難しく鍋の中をいつもチェックする必要がありますがじゃがいもとれんこんなら放置でOK。２つの野菜がもつ対照的な歯ごたえも楽しめます。
そしてサラダには厚揚げを切ってそのまま和えましたが、こちらも2月のはんぺん同様に「厚揚げって煮るか焼くかしないと食べられないと思っていました」の声。
厚揚げは旨味が豊富で油のコクがあるためサラダでもみそ汁でも細かく切って温かいごはんに乗せても美味しく食べられます。

料理クラスなのだから徹底的に料理をする・・ようなクラスではありません。
時にはやや手の込んだ料理も紹介しますが、殆どは手間要らず、シンプルに作れる料理です。

食材の使い道が広がると（何を作ろうかな？）と悩むことが減り、余って捨てる食材も減っていき、使い切る方法がわかります。

私たちが食べる食材は大勢の人達の苦労や手間によって届けられるのですから美味しく食べたいものです。
消費者である私たちの「美味しい！」こそが食材を育て、獲り、運んできてくれる人達に最も報いる言葉だと思っています。